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ガバペンチンの実力 2 (副作用) 

 今日はぐっと冷え込んだので、足のしびれ痛いのが強くなっちゃいました・・・。私は悪い方の足がいつも若干冷たいのですが、特に急に寒くなるとはっきり差が出ます。明け方に冷え込むと大抵、「巨大な沼にはまって毒蛭に足を吸われ、ビリビリと痺れる足で必死に逃げようとする」という、B級映画みたいな悪夢で目を覚まします。で、起きると当然、足が痛いわけです。もうちょっとマシな脚色はないもんでしょーか(笑)。

 先日の続きですが、まず、ガバペンチン(ファイザー、商品名ガバペン)を、CRPSタイプ1の患者さんに直接投与した臨床試験の論文1)が見つかったので、そのご報告から。

 結果を一言で言うと・・・うーん、微妙・・・。効いたかどうかハッキリとは分からない、ちょっとは効いてるかな?って感じらしい。
 試験では、58人の患者さんに、間に2週間の間隔をあけて3週間ずつ、ガバペンチンとプラセボを飲んでもらいました。どっちを先に飲んでるかは、患者さんにも先生にも試験が終わるまで分からない仕組み。最初の3週間では、確かにガバペンチン組の方が痛みが和らぎました。でも後の3週間では、それほどハッキリした差が見えませんでした。全体として、統計的に有意な違い(偶然ではありえないようなハッキリした違い)は出なかった。ただ、患肢の感覚障害は、ガバペンチンで改善したとのことです。
 研究チームは、「ガバペンチンはCRPSタイプ1にマイルドな効果がある。患者の一部は、投与によって利益を得るだろう」と結論してますが・・・

 先日の話に比べて、残念な結果ですね。私には間違いなく効いているガバペンチンですが、私はタイプ2です。もしかして神経損傷がある方が効くのかも?とも思いますが、タイプ2患者に対する臨床試験が見当たらないので、想像の域を出ません。
 神経因性疼痛治療に関する臨床試験の論文って、大半は帯状疱疹後の疼痛か、糖尿病性疼痛の患者さんが対象なんですよね。CRPSとか外傷性疼痛の人を対象にした試験って少ない気がします。残念です。

 気になる副作用の方ですが、ガバペンチンは概して副作用は少なく、長く飲み続けることができる安全な薬とされています2)。うっかり飲み過ぎても、重大な結果にはならない2)。3割弱の人にめまい、2割強の人に眠気が生じますが3)、薬をやめれば回復します2)。ただ1日の投与量が1800mgを超えると、1割くらいの人に四肢の浮腫が起きます2)。CRPS患者はただでさえ患部の腫れがひどいので、これはちょっと気になるところです。
 この薬は体内で代謝されずに、そのまま排泄されます。なので肝臓に負担がかかりません。でも腎臓に障害がある人は要注意です。2)

 ほとんどの病院では、院内の薬事審議会ってのがあって、ここで新しい薬をその病院に導入するかどうかを決めています。だから患者のもとに届くのは、年末か年明けくらいになるというところが多いんじゃないでしょうか。
 
 この薬、93年に米国でてんかん薬として承認され、2002年には帯状疱疹後の神経因性疼痛に適応拡大されてます。50以上の国で承認されて売れに売れ、ほかの製薬会社がこぞって神経因性疼痛薬の市場に参入するきっかけを作りました4)。一方、日本では2004年にようやく承認申請が出され、認可されたのは今年の7月。随分時間がかかったものです。

1)van de Vusse AC et al, Randomised controlled trial of Gabapentin in Complex Regional Pain Syndrome type 1 [ISRCTN84121379].BMC Nuerology 2004, 4:1
2)Gilron I, Flatters SJL. Gabapentin and pregabalin for the treatment of neuropathic pain: A review of laboratory and clinical evidence. Pain Res Manage 2006;11(Suppl A):16A-29A
3)RxList: The Internet Drug Index, Neurontin, Side Effects
4)Neuropathic Pain Insight - Life Beyond Gabapentin

*筆者あつこは医学には素人です。文献から、できるだけ正確な情報を伝えたいと心がけていますが、間違い、勘違いもあると思います。お気づきになったら、ご指摘頂ければ幸いです。

ガバペンチンの実力 1 (薬効) 

 9月22日、神経因性疼痛の痛みを和らげる、新しい薬が発売されました。ファイザーのガバペンチン(商品名ガバペン)。抗けいれん薬と呼ばれるタイプの薬です。
 といっても、ファイザーの発表文を読んでも、疼痛緩和に効果があるなんてことは、まったく書いてありません。今回はあくまでてんかんの薬として承認されたので、これ以外の効能はうたってないのです。ですがこの薬、米国では帯状疱疹が治った後に残る疼痛に対しても適応が認められています。帯状疱疹後疼痛というのは典型的な神経因性疼痛で、これに効果があるってことは、ほかの神経因性疼痛にも効く可能性が高いということです。外傷後の疼痛や、CRPSにも効く可能性があります。

 実際、どの程度期待できるんでしょうね?ちと調べてみました。
昨年、医学誌「PAIN」に興味深い論文が出ています。デンマークのFinnerupらが、神経因性疼痛の緩和を狙った臨床試験の論文105件を統計的にまとめ、各種の薬の効果を比較したものです1)。これによると、ガバペンチンは帯状疱疹後の疼痛だけでなく、糖尿病や脊髄損傷による神経因性疼痛に「中程度の鎮痛効果(moderate effect on pain)」があることが、大規模な臨床試験で確認されています。末梢神経の痛みに対して、「痛みが50%以上減った」または「痛みがかなり軽くなった(good pain relief)」「改善した(improved)」という人の割合は、この薬を処方された人のうち、約4.3人に1人です。
 えっ、そんなに少ないの?と思われるでしょうが、この数字は、それほど悪くはありません。神経因性疼痛によく処方される三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、商品名トリプタノールなど)で同等の効果があった人は2.3人に1人、SSRI(パロキセチン、商品名パキシルなど)では6.8人に1人です。神経因性疼痛に処方される各種の薬を、効く人の割合で順に並べると、ちょうど真ん中くらいです。

 この「1人に効果が上がるためには、何人治療しないといけないか」という数字は、NNT(Number Needed to Treat=治療効果発現必要症例数)と呼ばれ、薬の効果を比較する際によく使われる指標です。でも万能ではありません。プラセボ(偽薬)を比較対象とした臨床試験の結果から計算するので、既存の薬と比較した臨床試験の結果は反映されません。また質の異なる臨床試験を無理やり比べることが多くて誤差が大きくなりやすい、試した薬が効かなかった臨床試験はあまり論文として発表されないのでバイアスがかかるなど、色々な問題点があります。参考となる指標のひとつ、というくらいに見ておいた方がいいと思います。

 この数字とちょっと矛盾するような臨床試験もあります。1999年にMorelloらが19人の糖尿病性神経因性疼痛患者に、ガバペンチンと抗うつ薬のアミトリプチリンとをそれぞれ別の期間に投与して、効果を比較したものです2)。患者数が少ないという問題はありますが、二つの薬の効果には差が見られなかった(両方効いた)ということです。
 
 実はあつこには、この薬は非常によく効きました。受傷後、まだ激痛に呻いていた頃に「痛みが無くなるまで増やします」と言われ、実際、大丈夫か?と思うくらい増えていきました。一番多い時には1日に2700mgのんでました。3グラムなんて、ほとんど飴玉です(笑)。
 今は1日1800mgです。1日4回、6時間ごとに飲むのですが、たまに眠っちゃったりして飲み忘れると、はっきりと痛みが戻ってきます。この薬が日本にないと知って以来、帰国したらどうしよう!とずっと恐怖を感じていたので、日本での発売は嬉しいです。これで安心して日本に帰れます

 もちろん、あつこに効いたからといって、ほかの方に効くとは限りません。「疼痛治療はトライアル・アンド・エラー」(米S大ペインクリニック医師)。決定打は無く、色々な薬や神経ブロックなどを順に試してみて、自分に一番合うものを探すしかないようです。それぞれ副作用もあるし、口で言うほどたやすくはないんですが、ほかに手はないのが実情です。
 この薬だって決して特効薬ではないのですが、選択肢は沢山欲しい。この薬しか効かない、って人もいるかもしれないんだもんね。

 ガバペンチンを神経損傷やCRPS患者の疼痛緩和に使うのは、いわゆる適応外処方になりますが、ご存知の通り、神経因性疼痛の薬なんてそんなのばっかりです。医師が保険組合に説明してくれれば、大体通るでしょう。大学病院ならまず大丈夫だと思います。

 副作用についても書こうと思っていたのですが、長くなってきたので、次回に回しますね。                          (この項続く)

出典:
1)Finnerup NB, Otto M, Mcuay, et al. Algorithm for neuropathic pain treatment : A evedence based proposal.Pain 118:289-305,2005
2)Morello CM, Leckband SG, et al. Randomized double-blind study comparing the efficacy of gabapentin with amitriptyline on diabetic peripheral neuropathy pain. Arch Intern Med 1999;159:1931-7

*筆者あつこは医学には素人です。文献から、できるだけ正確な情報を伝えたいと心がけていますが、間違い、勘違いもあると思います。お気づきになったら、ご指摘頂ければ幸いです。

私って、CRPSなの? 3 (「症候群」って実は) 

 昨日、あれからつらつらと考えてみたんですが、医師によって診断が割れる(CRPSか、単なる神経損傷か)根本原因は、お医者さんの守備範囲の違い以上に、「CRPSの正体が分かっておらず、ちゃんとした定義ができない」ってことにありそうです。

 そもそも、CRPS(複合性局所疼痛症候群)の「S」、つまり「シンドローム(症候群)」というのは、パッと見は凄そうですが、実は「何か変なことが色々起きているけど、なんでこうなるのかハッキリしない。どういう病気か分かんないけど、何か名前がないと不便」という時に使われる言葉です。病名というより、ある一連の症状を起こすような未知の異常を、良く分かってる病気と区別するための便宜上の区分け、といった方が適切かもしれない。

 病気の正体が分かって入れば、病気は確定診断ができます。いや、できるというのは言いすぎで、技術的・時間的に難しい、ってことだってあるけど、少なくとも確定診断の方法は存在している。
 例えばがんだったら「細胞が突然変異して、際限なく異常増殖する病気」という正体が分かってます。だから、表に出ている症状が頭痛だろうが腹痛だろうが、はたまたまったく自覚症状がなかろうが、そういう細胞が見つかれば、疑いもなくがんです。
 風邪だって、「風邪の菌に感染し、炎症などを起こしている状態」だってことが既に分かってます。喉の細胞を培養して風邪の菌が出てくれば(時間がかかるからあまりやらないけど)、確実に風邪です。

 でも、○○症候群と言われている病気の多くは、そもそも正体が分かっておらず、発病の仕組みも不明なので、確定診断する方法がありません。医師が患者の症状を見て、「ほかに理由が見つからないし、どうもコレらしいね」ってことで診断します。でも症状の見方ってのは医師によって微妙に違ったりしますからねぇ。いくら学会などで定義を決めても、なかなかキレイには鑑別できません。慢性疲労症候群などにも、同じ問題があるようです。
 あ、症候群という名がついていても、その後研究が進んで正体が明らかになり、確定診断がつくようになった、って病気も勿論あります。AIDS(後天性免疫不全症候群)なんかがそうです。でもCRPSの研究は、まだそこまでの段階に達していません。

 そもそもCRPSという病名自体、使われるようになったのは1995年からとまだ日が浅いです1)。病気自体は、それ以前から「RSD(反射性交感神経性萎縮症)」とか「カウザルギー」という名前で知られていました。
 この2つは、発症の引き金となる怪我が違います。カウザルギーは神経の直接的な損傷がきっかけになるもので、戦争で負傷した兵士の中に酷い痛みに苦しむ人がいたことから発見されたといいます2)。私はこっちの方。一方RSDは、捻挫や手術など、神経の損傷がない小さな傷や、ちょっとした侵襲がきっかけて発症します。採血とか3)、骨折でギプスをはめたとか4)、心筋梗塞の発作を起こしたことか4)、実に様々なことが引き金になるようです。

 きっかけは違っても、その後の症状や経過はほぼ同じなので、「CRPS」という名前に統合されたようです。主要神経の損傷がないRSDを「CRPSタイプ1」、主要神経の損傷から発症するカウザルギーを「CRPSタイプ2」と呼んでいます。
 というのが大体の合意のようですが、医師によっては神経損傷があるタイプもひっくるめて全体を「RSD」と呼ぶ人もいて、ますます混乱しています。RSDというのは、当初どうも交感神経が関与していると思われたところから付けられた名前ですが、後に交感神経が関係していない症例も見つかったことから、より幅広い「CRPS」という名称に統一されたようです。
 でもまあ幅広いっつーか、要するに「身体の一部が痛い」ってこと以外、何も言ってないって病名ですよね。いかにも「何も分かってない」って感じがありありです(苦笑)。

 CRPSは発症の仕組みによって命名されたのではなく、ある一連の症状があるということを示しているだけですから、「実は全然違う複数の病気が入っていた」とか、「全然別の病気だと思っていたものが、実はこの病気の一種だった」とかってこともあり得ます。日本の大学病院ペインクリニックのD医師など、「CRPSという診断名は、よくわからない疼痛症候群のgarbage can(ゴミ箱)にするためのもの」と言い切ります。理由も治療法も分からない疼痛には、何でも「CRPS」という名前をつけて済ませちゃってる、という意味かと思います。うーむ。
 私の病気は、CRPSの定義は満たすものの、どうやらCRPS患者の多くより、経過がかなり良いようです(これでも・・・涙)。今のCRPSの定義の中には入るにしても、痛みが広がっていくような重症CRPSとは、どこか違うのかもしれません。勿論、やっぱり同じ病気で、今後、増悪に転じるって可能性だってありますが。

 近い将来、CRPSの発症の仕組みが解明されて、きちんと診断、治療が行われるようになることを期待しています。研究者さんには、是非頑張って欲しいです。

出典:
1)国際RSD/CRPS研究財団 標準的治療法ガイドライン第3版
2)痛みと鎮痛の基礎知識 -Pain Relief- より「CRPS」
3)採血後の痛み…「複合性局所疼痛症候群」家庭の医学All About
4)MediFocus Guide "Reflex Sympathetic Dystrophy" (2005)

私って、CRPSなの? 2 (割れる医師の意見) 

 私は2つの病名をもらっています。「神経損傷による麻痺・機能障害と神経因性疼痛」、そして「CRPSタイプ2」です。それぞれについて、お医者さんの意見を紹介します。

 まず、米S大学病院リハビリテーション&理学療法科のA医師。
 「確かに一時はCRPSも疑いましたが、現在はそうではないと判断しています。症状が軽すぎるのです。CRPSだったら、もっと足が腫れ、色が変わり、皮膚に光沢が出てくるなど、はっきりした変化が表れます。アツコの足は、外見はほとんどノーマルですよね。腫脹も温度変化もマイルドで、CRPSらしくありません」
 「それに痛みが起きている部分が最初に損傷した神経の支配領域に限局していますし、痛み自体もだんだん良くなってきています。CRPSは、そんなに簡単にはよくなりませんよ。神経が損傷した部分だけでなく、そのほかの領域に腫れや痛みや広がっていきます。私は足首を怪我したのに、膝、腰、さらに腕へと症状が広がっているCRPS患者さんを診ています。神経損傷をきっかけに、さらにもう一歩進んで、普通の医学の知識では考えられない異常が起きるのがCRPSです。だから難しいのです」。

同じ大学病院のペインクリニックのB医師。
 「CRPSと考えてよいでしょう。学会が決めたCPRSの診断基準というものがあります。1年近く疼痛とアロディニアが続いており、患部の温度変化があり、過去に腫れがあったのなら、この診断基準をすべて満たします
 「症状が軽いもの、痛みが限局しているものは除くといったことは、診断基準には書いてありません。症状の軽い患者だっていますし、症状が一定の場所に限局し、何年もずっとそのまま、ということだってあります。いろいろなCRPSがあるのです。診断は客観的な基準に基づいて行われ、あなたの症状はそれに合います。だからCRPSと診断してよいと思います」

メールで相談した、日本の大学病院ペインクリニックのC医師。
 「私の知ったデータからは、あつこ様の病態は典型的なCRPSと考えます。世界疼痛学会(IASP)の診断基準にも合致します。(あつこ:損傷による神経因性疼痛か、CRPSかはどうやって鑑別するんでしょう?)CRPSは神経因性疼痛の一種と考えます。神経組織の損傷か機能異常によって起こる痛みを神経因性疼痛といい、その中でIASPの基準にあった場合をCRPSといっています」

 ふーむ。ペインクリニックのB、C医師は、ともに国際学会の決めた診断基準に合うからCRPSである、と仰ってます。明快です。
 これに対してリハビリ科のA医師は、これまでのご自分の臨床経験に照らして、CRPSにしては経過が良すぎる、と思っておいでです。診断の仕方が科学的でない、という批判もあるでしょうが、多数のCRPS患者を診てこられた専門医の直感は馬鹿にできません。事故直後からずっと私を診察し、誰よりも経過をよく把握されている方が「違う」とおっしゃるからには、やっぱり何か違うんじゃないか、という気もします。
 今のところ、私はおそらく学会の定義に照らせばCRPSに当てはまるんだけど、臨床的にはボーダーにいると言えるくらい軽いんだろうと自己診断しています。

 それにしても、CRPSという病名の適用範囲が、医師によってかなり違いますね。これは勘ですが、おそらくリハビリ科や整形外科よりペインクリニックの方が、CRPSの適用範囲を広く取っている感じがします。ペインクリニックはCRPSという疾患に早くからなじんでいたはずですし、何といっても疼痛の専門家です。
 別にペインクリニックに限りませんが、お医者さんは一般に、自分の専門領域に引きつけて患者を診立てる傾向があると思います。確定診断ができない病気なので、科による違いが出やすいのでしょう。

私って、CRPSなの? 1 (国際学会の診断基準) 

 先日書いたように、私の痛みについては「CRPS(正確にはCRPSタイプII)だ」と見る医師と、「神経損傷からくる疼痛。CRPSにはなっていない」と言う医師に分かれています。なんでこーなるんだ?と、ちょっと考えてみました。

 まず、神経損傷による疼痛って何かというと。
 事故などで神経を損傷すると、その部分は麻痺しちゃうから、動かないし痛みもない、と思っている人は多いと思います。でも実は、必ずしもそうじゃないのです。動かせず、通常の知覚は無くなっても、痛みはしっかりとある、というケースは少なくありません。私も事故直後は左足首から下がまったく動きませんでしたが、痛みは強烈でした。脊髄損傷で下肢が完全に麻痺している人でも、約7割は足や腰などに痛みを感じているという調査もあります。1)
 痛みというのは本来、身体が出す危険信号です。細菌に感染して炎症を起こしたとか、癌が増大してどっか圧迫しているとか、体に何かまずいことが起きているのを知らせるサインです。ところが神経を損傷すると、原因が無くても痛み信号を出し続けることがあります。怪我だけでなく糖尿病や帯状疱疹などの病気によって起きることもあり、こういう痛みを一般に「神経因性疼痛(ニューロパシック・ペイン)」と呼びます。

 じゃあ、CRPS(この場合はタイプII)って何?というと、「更に一歩進んで、神経の損傷だけでは説明しきれないような異常な反応が起こっている状態」(主治医)です。異常と言っても多種多様。皮膚が変色する、温度が変わる、爪が速く伸びる、関節が固くなる、骨が萎縮する、怪我をした部分以外に痛みが広がる・・・などなど。IAPS(国際疼痛学会)がまとめたCRPSタイプIIの診断基準は、こうなってます。2)

  1、神経を怪我した後に、持続する疼痛、アロディニア、または
    痛覚過敏がある。その場所は必ずしも、怪我をした
    神経が司る部分だけとは限らない。
  2、痛む領域に、腫れ、皮膚の血流変化、発汗の異常が
    起きたことがある。
  3、こうした痛みや、機能の異常を起こすような理由が
    他にない


 私の場合、1は確かに当てはまります。事故直後は、左足のふくらはぎの外側から足首、足の甲、そして足の裏に至るまでジンジンと痺れるような痛みがありました。シーツにちょっとでも触ると電気ショックのような激痛が起きるので、左足はいつもベッドから突き出して寝てました。(こんな風に、触るとか、指でなでるとか、普通だったら痛みなど感じないはずの刺激で激しく痛むことを、「アロディニア」と呼びます。)
 今はかなり良くなったとはいえ、アロディニアはやはり残っています。親指を中心に、足の甲と足の裏の先端3分の1ほどの領域。診察の際、時々医者に指でかるーくこすられますが、その度、うぁあああー、やめれ!と叫んでます。心の中で。
 ふくらはぎや足首の周りは感覚がむしろ鈍くなっていて、そのくせ椅子の角などが当たると結構ピリピリと痛みます。(こんな風に、軽い痛みですむはずのところが異常に強く痛むことを、「痛覚過敏」、または「ハイパーアルジシア」といいます。)
 こういったオーバーリアクション系の痛みのほかに、放っておいても痛い、普通の疼痛も相変わらずあります(前回に詳述)。モルヒネなどの痛み止めも手放せません。もっと良くなると思いたいのですが、事故からそろそろ1年たち、症状がかなり安定しちゃってるような気もします・・・。

 一方、基準の2については、当てはまるかどうか微妙です。CRPSの患者さんは大抵、患部には目で見てはっきり分かるような異常が起きています。パンパンに腫れていたり、皮膚が赤や黒っぽくなってツヤツヤと光る感じになったり。網目状、ウロコ状に変色している例もあって、痛々しいです。
 ところが私の場合、足の見かけは、ほとんど普通と変わりありません。事故からしばらくは皮膚が乾燥してガサガサになりましたが・・・これは単に左足を洗えなかった(痛くて触れず、せいぜいお湯につけるくらいだった)せいかも(笑)。半年ほどは左足が健康な右足より一回り大きくなってましたし、今も若干むくんでいますが、比べてみないとわからない程度。CRPSによくある凄い腫脹とは、ちょっと違う感じもします。爪が速く伸びたり、体毛が固くなるってこともありませんでした。
 痛む場所の温度変化はありました。事故後1、2ヶ月は左足首から下が熱いような感じがし、いつも氷嚢で冷やしていました。ところが3ヶ月目くらいから逆にどんどん冷えてきて、また冷えるほど痛むように。今度は氷嚢にお湯を入れ、常に足先に乗せておくようになりました。外出して足が冷えると強く痛むので、寒い日に出かけたら、帰宅後まずドライヤーの温風を左足に当てます。とにかくまず足を解凍してやんないと、何もできないです(笑)。
 でも、これもいつも冷たい、ということはありません。長時間座っている時とか、気温が低い時とか、冷える状況になった時により冷えやすい、という感じ。「皮膚の血流変化」を示唆しているような気はしますが、ぴったり当てはまるかとなると、よく分かりません。
 ちなみに基準の3については言うまでもなく、怪我以外に思い当たる原因はありません。
(この項続く)

 出典:
1)脊髄損傷に伴う異常疼痛に関する実態調査報告書、日本せきずい基金、2004年9月
2)Merskey H, Bodguk N, eds. Classification of Chronic Pain: Descriptions of Chronic Pain Syndromes and Definitions of Pain Terms. 2nd ed. Seattle, Wash: IASP Press; 1994:40-43. http://www.painbooks.org あつこ意訳

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